高齢者の一人暮らしでは賃貸物件を借りられない、というニュースを耳にします。
確かに、家主としては両手を上げて歓迎というわけにはいかないでしょう。
しかしながら、もはや日本の人口の3割近くが65歳以上です。
ニーズの高まりと共に、社会的な制度や設備が充実してきています。
ここでは、高齢者が賃貸住宅で一人暮らしをする際の懸念事項と対策を解説し、高齢者の一人暮らしでも歓迎される不動産会社や、安心して暮らせる制度や見守りサービスを紹介します。
どうぞ記事をお読みになって、賃貸物件の情報収集にお役立てください。
1人でも多くの高齢者が、安心して一人暮らしをできることを願います。
一人暮らしの高齢者|4人に1人は賃貸入居を断られた経験あり
高齢者の一人暮らしでは、賃貸物件を借りられないと思い込んでいる方が少なくありません。
実際、ある調査では賃貸物件を借りようとして断られた高齢者が23.4%、4人に1人が断られています。
5回以上も断られたという方も13.4%です。
「老い」に対するさまざまな不安があるため、一般的な賃貸物件の家主、あるいは不動産会社としても両手を上げて歓迎というわけにはいかないでしょう。
借り手としても、5回以上断られたら「借りられない」という意識が強くなるのも無理はありません。
ただし、こうしたデータは過去のものです。
高齢者層が増え続ける日本の現状を鑑みた賃貸住宅事情は着実に変わりつつあります。
一人暮らしの高齢者の3人に1人が賃貸物件に住んでいる
2022年9月現在、日本の総人口における65歳以上の割合は29%、3人に1人が高齢者と呼ばれ、今や世界最高の高齢者大国となっています。
独居老人と呼ばれる一人暮らしの高齢者数は600万人を超え、そのうち賃貸物件に入居している方は、コロナ前の2018年ですでに210万世帯を超えていました。
一人暮らしの高齢者のうちの3人に1人が賃貸物件に住んでいる計算になります。
高齢者のニーズに応えられるような物件を専門的に取り扱う不動産会社や、設備・支援サービスを手掛ける企業も増えてきました。
コロナ禍でダメージを受けた不動産業界にとって、日本の人口の3割を占め今後も増加が見込まれる高齢者層は、もはや一大マーケットなのです。
一人暮らしの高齢者が賃貸物件を借りるリスクを家主側から検証
ここでは、一人暮らしの高齢者が賃貸物件を借りようとする場合のリスクを、家主の立場から検証します。
入居者の「老い」への不安を鑑みた家主が想定する、具体的なリスクは以下3点です。
- 改築が困難
- 介助が必要になる可能性
- 家族や保証人と音信不通になる可能性
それぞれについて解説します。
改築が困難
アパートやマンション、借家それぞれに建物としての耐用年数があり、木造の場合22年、鉄筋コンクリートが47年と定められています。
条件と環境により長くも短くもなりますが、いつまでも同じ状態を維持できるわけではありません。
たとえば、築30年の鉄筋コンクリートのマンションを70歳の方に貸したとします。
耐用年数の17年後には87歳です。
家主は建て替えを検討しますが、高齢の方は環境変化への適応が鈍くなるため、改築に賛成しない可能性があります。
法律上、入居者が一人でも反対したら建て替えができないため、家主は改築をあきらめるしかありません。
一人暮らしの高齢者が賃貸を借りる場合、こうした事情を踏まえた事前の話し合いが不可欠でしょう。
介助が必要になる可能性
高齢者の一人暮らしの場合、入居時に健康であったとしても事故や病気で介助が必要になる可能性は若い人よりはるかに高くなります。
そして、もっとも懸念されるのが認知症の発症です。
一人暮らしの場合、発症や進行に周囲が気付きにくいため対処が遅れがちになります。
周囲とトラブルになったり、犯罪に巻き込まれたりする可能性もあるでしょう。
政府の発表によると、65歳以上の人口は2060年に600万人を超え、認知症予備軍と呼ばれる軽度認知障害者数との合計は1,277万人と推定されています。
実に高齢者の2.8人に1人が認知機能に障害があることになり、もはや認知症対策なしでは日本という国が機能しないほどです。
家主側もこうした実情を踏まえ、設備導入やサービスを充実させつつあります。
家族や保証人と音信不通になる可能性
賃貸物件を借りるには保証人が必要です。
保証会社を利用する方法もありますが、多くの場合家族や友人を保証人とします。
そうして入居はしたものの、2年後の更新時には保証人の家族や友人と音信不通になった、という事例が少なくありません。
法律上、更新時には保証人がいなくても住み続けることは可能です。
しかしながら、保証人のいない一人暮らしの高齢者に部屋を提供し続けなければならない家主は、万一のことを考えると不安になります。
高齢者の一人暮らしには、切れ目のない支援が必要でしょう。
孤独死後の借り手への懸念
日本賃貸住宅管理協会による2018年度の調査では、家主が高齢者の入居を拒む主な理由として屋内での死亡事故を挙げています。
特に個室での孤独死は発見が遅れがちです。
遺体の腐敗による周辺環境への影響が懸念されます。
修繕費は嵩み、孤独死のあった部屋は事故物件として次の借り手が決まりにくくなるでしょう。
高齢者の一人暮らしの場合、一人暮らしであっても孤独にはならないための支援も必要です。
一人暮らしの高齢者が安心して住み続けられる賃貸物件とは
高齢者が安心して一人暮らしを続けるには、バリアフリーや手摺など設備の充実はもちろんのこと、家族や地域の協力が不可欠です。
具体的には、下記のような要件が満たされると安心度は高くなります。
- 住み慣れた土地
- 家族と近距離
- 医療機関と買い物のアクセスがよい
- 老人クラブや地域の活動が活発
- 見守り体制が整っている
住み慣れた土地で家族がすぐに駆け付けられる環境が望ましいのですが、その土地に高齢者の一人暮らしを受け入れる物件が必ずしもあるとは限りません。
また、家族の転勤や経済的なハードルもあります。
近年では、そうした背景を踏まえ、遠方からでも安心して高齢者の一人暮らしを見守れるサービスが発達してきています。
地域活動への参加と併せての利用で、一人暮らしの高齢者に対する、室内外の活動のすべてを安心して見守れる体勢が整いつつあります。
一人暮らしの高齢者の賃貸に関する不動産情報と活用したいサービス
高齢者層の増加に伴い高齢者向けの賃貸物件は増え、もはや買い手市場となりつつあります。
下記のように、一人暮らしの高齢者を歓迎する不動産会社や家賃保証があり、見守りサービスも豊富です。
- UR都市機構による高齢者の賃貸住宅
- 「シニア相談可能」の不動産会社
- 高齢者住宅財団による「家賃保証制度」
- 遠方からでも見守れるサービスや機器
それぞれについて解説します。
UR都市機構による高齢者の賃貸住宅
UR都市機構とは、 Urban Renaissance Agency(都市再生機構)の英文字の頭文字による名称です。
独立行政法人として、市街地の整備や賃貸住宅の供給支援、管理などを行います。
このUR都市機構による高齢者向けのUR賃貸物件には、以下のような種類があります。
高齢者向けの賃貸物件には以下のような種類があります。
種類 | 特徴 |
---|---|
高齢者向け優良賃貸住宅 | ・床の段差をなくし要所に手すりを設置 ・一定以下の所得の方には家賃軽減措置 |
健康寿命サポート住宅 | ・移動に伴う転倒防止に配慮 ・散歩をしたくなる屋外空間あり ・社会参画の機会が豊富 |
シルバー住宅 | ・生活援助員が入居者を見守る ・緊急通報装置等の設置もある ・東京都と大阪府のみ |
URシニア賃貸住宅(ボナージュ) | ・自立志向の強い高齢者向け ・フロントサービスと提携医療機関あり ・安全性重視の設備とシステムが充実 |
それぞれ入居条件が異なりますが、利用する高齢者の所得や性格に応じた選択ができるのは大きな魅力です。
「シニア相談可能」の不動産会社
高齢者層が一大マーケットとなった今、下記のようにシニア専門の物件を取り扱う不動産会社や高齢者に特化したページを設けている不動産会社が増えつつあります。
- R65不動産
- エイブル/シニア向け・高齢者向け
- CHINTAI/シニア可の賃貸情報
- モンスター不動産/高齢者・生活保護者向け賃貸物件
こうした物件は、バリアフリーやセキュリティなどの設備が整っているため安心です。
高齢者住宅財団による「家賃保証制度」
高齢者住宅財団とは、国民の住生活の安定と向上を目的として設立された一般財団法人です。
1933年の設立以来、シルバーハウジングや高齢者の住宅計画に関する調査研究を通じて高齢者向けの住宅事業の重要性をアピールしてきました。
高齢者住宅財団による「家賃保証制度」とは、高齢者住宅財団が連帯保証人となり、滞納家賃や原状回復費用を賄ってくれる制度です。
物件は限られますが、60歳から利用できます。
契約時に家賃の35%を支払うことによって滞納家賃12ヵ月分、原状回復費用9ヵ月分を保証してもらえるため、入居される方はもちろん、家主にとっても安心できる制度です。
賃貸で一人暮らしの親を遠方から見守れるサービス
一人暮らしの高齢者を遠方からでも安心して見守れるよう、以下のようなサービスが展開されています。
アイシル
遠方からでも一人暮らしの高齢者を見守れるサービスの1つ目は、株式会社アイトシステムから販売されている「アイシル」です。
「カメラで見守られるのは、監視されているようで抵抗がある」という老人の方も多いはず。
アイシルは、そんな悩みを解消してくれる見守りシステムが搭載されています。
各種センサーで「24時間365日」安心・安全に見守ることができ、認知機能の低下の早期発見にも効果抜群!
月額料金は2,178円~となっていますので、非常に経済的となっています。
アイシルについて、さらに詳しく知りたい方は、見守りサービス「アイシル」の口コミ評判|認知症対策にもなるって本当?の記事で解説しています。
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アイシルMANOMA(マノマ)
SONYがサービスを展開している見守りサービスは「MANOMA(マノマ)」です。
離れて暮らす一人暮らしの親御さんの様子が心配という方に、是非おすすめしたいサービスとなっています。
リアルタイムで親御さんの状態が確認できるのはもちろんのこと、開閉センサーで日々の生活リズムを把握!
オプションサービスを利用すれば、エアコンや玄関錠の遠隔操作も可能で、緊急事態が発生したときには駆けつけサービスにも対応してもらえます。
初期費用も不要で、月額料金は初月「1,650円」2ヶ月目以降「3,278円」と大変リーズナブル。
MANOMAについての詳細は、MANOMAの口コミ評判を徹底解説|特徴や料金プランも紹介!で解説しています。
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MANOMAセコム 親の見守りサービス
ホームセキュリティーとして広く知られているセコムでは、駆けつけサービスに対応している見守りサービスが提供されています。
一定時間動きを察知できない場合には見守る側のご家族に通知されたり、アプリを使用して生活リズムや外出確認なども可能です。
また、留守中の防犯対策もバッチリなのが嬉しいですね。
月額料金は5,060円~となっていますので、駆けつけサービスを利用したい方はぜひ参考にしてみてください。
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セコムアルソック みまもりサポート
ALSOK(アルソック)のみまもりサポートは、緊急時の駆けつけサービスや熱中症対策・健康相談などがセットになっています。
オプションサービスも充実しており、ドアセンサーなどで安否確認ができたり徘徊見守りや外出/帰宅通知・緊急速報メール通知など、さまざまな見守りを自由に選択できるのが魅力。
月額料金の支払い方法も3種類から選べるようになっていています。
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- レンタルプラン:初期費用13,365円/月額料金2,838円
- ゼロスタートプラン:初期費用0円/月額料金3,069円
オプションサービスも、利用しやすい料金設定となっていますので、ぜひALSOKのみまもりサポートをチェックしてみてくださいね。
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アルソックみまもりCUBE
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高齢者の自宅には設置されていることが少ない「ネット環境」ですが、見守りサービスを検討する際は、新たにインターネット回線を契約するタイプが多いという現状があります。
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みまもりCUBEについての詳細は、みまもりCUBEの口コミ・評判は?特徴や費用について徹底解説!の記事で紹介していますので、是非チェックしてみてください。
その他のおすすめ見守りサービス
サービス・機器名 | 概要 |
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また、各種センサによる居住空間の見守りサービスは24時間切れ目がないため、小さな変化にも気づきやすい利点があります。
こうした設備の開発は今後も進むと見込まれます。
まとめ|高齢者の一人暮らしは今後も増えるため賃貸の整備が進む
日本は高齢者大国となり、不動産会社にとっては高齢者層が一大マーケットとなりました。
高齢者が賃貸物件で一人暮らしをすることを前提とした制度やサービスの整備が進み、通信技術の目覚ましい進歩により万一の場合の迅速な対応も可能です。
遠方に住むご家族にとっては心強い限りでしょう。
高齢者向けの賃貸物件は今後も整備が進み、より住みやすくなることは間違いありません。
本記事が、よりよい物件と巡り合える快適なシルバーライフの一助となれば幸いです。